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椎間板ヘルニア

 ここ数日は比較的暖かいものの、そろそろ冬の訪れの気配です。動物もヒトと同様に、季節により病気の数が増減します。十分に体が暖まっていないうちに急激な運動をすることで、体の各所を痛めることがヒトでもよくありますが、動物でこれに少し近い神経の病気として本日は椎間板ヘルニアについてお話ししたいと思います。

 疾患名に付されている「椎間板」とは、背骨と背骨の間にある軟骨であり、脊椎に加わる衝撃を緩和させるクッションの役割をしているとされます。動物に最も多い脊椎の疾患は、「椎間板ヘルニア」であり、椎間板に何らかの衝撃が加わることで本来納まっているスペースから椎間板が上(背中側)へ飛び出し、脊椎内を走る神経を圧迫することで、各種症状を呈します。脊椎には、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎および尾椎があり、どの場所で神経の圧迫が起きたかで症状は異なり、痛み、前肢や後肢の麻痺、自力で排泄ができないなどの症状を呈します。

 この病気を頻発する犬種として、ダックスフント、トイプードル、ペキニーズ、ビーグルなどが知られておりますが、当院において、これらの症状で受診する動物の9割は、ダックスフンドのワンちゃんです。もともと持病があり、じわじわと悪化してくることもありますが、「突然、後ろ足が立たなくなった」などで来院されることが多いです。

 この病気は、単純なX線で診断することはできず、疾患と病変部位を特定するには全身麻酔下における脊髄造影検査またはCT検査が必要となります。

 圧迫が軽度の場合は、跛行(びっこ)を示さないこともあり、背中を丸まるなど、痛みのみを呈することがあります。この場合は、安静の維持や、痛み止めや抗炎症薬といわれるお薬を使用した治療(内科療法)で様子をみることもありますが、最初は軽い症状でも、日を追うごとに悪化することもあるため、注意が必要です。

 圧迫が中等度の場合は、前肢または後肢が不完全な麻痺(不全麻痺)を呈し、起立歩行可能な場合と不可能な場合とがあります。歩行困難な場合は、内科療法での治療効果が乏しい場合があり、神経の圧迫を解除する手術をおすすめすることもあります。

 圧迫がより重度の場合は、前肢または後肢が完全な麻痺(全麻痺)を示し、起立することはおろか、自力で排尿ができなかったり、患肢をつねっても反応がない(深部痛覚の消失)などの徴候を示し、早急な手術が必要となります。

 毎日のようにスクワットをしても腰に何ら問題を示さないヒトがいるのと同様に、アジリティーなど、ハードなスポーツをしているワンちゃんが必ずしもこの病気になるわけではないことを考慮すると、単に運動のみにより発症するわけではなさそうです。 しかしながら、もともと椎間板自体に問題があった個体や、胴が長いなどの形態的を有する問題を有する動物、軟骨異栄養犬種といわれる前述の犬種、そして過去にこの病気の経験がある動物は、特に注意する必要があります。

  2014/11/04   スタッフ

外耳炎

  外耳炎についてお話し致します。外耳炎は、外側から鼓膜までの外耳道内に、細菌や真菌(カビが蔓延ることで発症する病気です。我々の耳垢も決して無菌的ではなく、探せば少々の細菌などがいるのと同じことが動物にもいえます。外耳炎を動物の耳垢を顕微鏡で観察すると、多くに個体で細菌やマラセチア(カビの一種)といわれる病原体がみられます。罹患した動物の耳が匂うのは、これらの病原体による発酵臭と思われます。

 外耳炎が軽度であれば、こまめに耳のお手入れをすることで良好に経過することも多いですが、耐性菌(抗生物質が効かない細菌)の出現やアトピーを持病をして持っている個体では、重篤化または難治性となることがあります。重症な個体では、耳道壁が肥厚し、綿棒が通らない程に耳道が狭くなります。また、病変が鼓膜を越えてさらに中耳まで及ぶこともあります。

 かつては、耳の垂れた犬種は湿気が外耳道内こもることで、細菌や真菌が繁殖しやすくなり、外耳炎が多いとされておりましたが、現在では、飼育犬種の変遷もあってか、耳の立った犬でも同様の割合で本疾患がみられている印象です。この疾患も、症状はやはり「かゆみ」です。「耳が匂う」ことはさることながら、「頭や首をふる」や「耳を手足でかく」、「首をかしげる」などは、耳のトラブルから起きている可能性があります。

 治療は、やはり「耳のおそう」じが重要となります。耳のお手入れの方法もご家庭で実施可能なものから、動物病院でないと困難なものまで種々あります。特に、耳道の損傷を考慮すると、ご自宅での綿棒を使用したお手入れはあまりお薦めできません。根本的な治療は、原因菌を一掃または減少させることであるため、おそうじと合わせて抗生物質や抗真菌薬を耳に直接投与したり、または経口薬の投与をします。一方、かゆみが激しい場合は、症状を落ち着かせるためにステロイドといわれる薬剤を一時的に使用することもありますが、長期に亘る使用はあまり推奨できません。既に耳道が狭窄してしまっており、耳のおそうじも困難動物には、外科的な治療により耳道を再建あるいは、完全に切除することもあります。しかしながら、外耳道を再建する手術は、あくまで「メンテナンスを容易にする」ための手術であり、術後、耳のお手入れが不要になるわけではありません。

 耳のトラブルは、夏場に比べ今の時期は症状が落ち着いている動物も多いですが、基本的には季節に関係ない疾患なので、我々が時々耳そうじをするのと同様に、動物もこまめなメンテナンスが必要です。

  2014/10/29   スタッフ

アトピー

 暑い夏が終わり、心疾患や皮膚疾患を有する動物は大分すごし易い季節になったのではないでしょうか。今回は、アトピー性皮膚炎についてお話し致します。

  ヒトと同様に、動物にもアトピーがあります。この病気は、体内の免疫機構が関与することでアレルギー反応がおき、発症します。症状は何といっても「かゆみ」です。かゆみを起こす皮膚の病気は、細菌、真菌(カビ)および寄生虫などによる皮膚炎等々、アトピー性皮膚炎以外にもたくさんありますので、まずはその個体が本当にアトピー性皮膚炎なのかを診断する必要があります。その他の疾患を除外し、発症年齢、飼育環境および病変部位などを勘案し、アトピー性皮膚炎を疑います。アトピー性皮膚炎には、原因となるアレルゲンが存在するため、原因物質のには特殊な血液検査を実施することもあります。

 自己免疫を関係する疾患ゆえ、完治させることは困難であり、かゆみとの戦いになります。しかしながら、獣医療においても、かゆみを軽減させる様々な治療が実施されるようになってきました。毎日口にするフードは、極めて大きな因子となります。また、皮膚のお手入れ(シャンプー)も重要です。一般のフードやシャンプーは、量販店に行くとどれを買えばよいか迷うほど、たくさんの種類がありますが、アトピー性皮膚炎に罹患している個体には、特別食(処方食)や薬用シャンプーをお薦めしております。その理由として、フードやシャンプーの変更により薬物の助けをなしに症状の改善が得られる場合があるからです。一方、ヒトの食べ物やおやつなどを与えていると、いくらお薬を使っていても本末転倒になりかねません。それでもかゆみが落ち着かない場合は、お薬の力を借りざるを得ないと思われます。

 古くからヒトにおいても使われている薬剤として、ステロイド(外用、内服)があります。非常に切れ味の良いお薬であり、短期間、適正な薬用量で使用する分には優れたお薬ということができます。しかしながら、長期に亘る使用は、肝障害などの副作用を考慮するとお勧めできません。ステロイドを使用している間はかゆみが落ち着いていても、中止すると再発する場合は、屯服的な使い方(かゆい時だけ使用する)や、他剤への変更を検討する必要があります。

 抗ヒスタミン剤は、ステロイドに比べ体への負担が小さいことは優れた点といえます。しかしながら、動物ではヒトほど鮮明な効果が期待できない側面もあります。その他の内服薬として、シクロスポリン(免疫抑制剤)があります。本剤は、効果が十分期待できると同時に、ステロイドと比較して、長期の使用でも副作用が比較的小さいという利点があります。難点は、薬価が高いことです。

 その他、インターフェロンの注射や、減感作療法(アレルゲンを薄めた薬剤を投与し、体を慣れさせる)の注射による治療があります。薬剤以外では、サプリメントを用いた治療があります。

 

  2014/10/25   スタッフ

尿石症

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   尿石症についてお話し致します。動物も、ヒトと同様に腎臓、尿管、膀胱および尿道内に結石が形成されることが知られております。結石が形成される場所により症状および重篤度は異なりますが、特に結石が詰まって尿道を閉塞した場合は、尿を排出することできなくなり、その状態が持続すると腎臓への負担が増大することで急性腎不全となり、生命を脅かす可能性があります。また、明らかな結石が認められない場合でも、尿中に結石の原因となる結晶がみられる場合は、膀胱炎の引き金となり、「頻繁に尿をする」、「トイレから出てこない」、「尿が赤い」、「尿が出にくい」などの症状を呈するため、注意が必要です。

 結晶が析出や結石の形成には、体質的な問題や食事が関与しております。ある種の結石または結晶は、尿中に溶解させることが期待できるため、治療として特別な食事(処方食)を与え続ける必要があります。一方、写真(図1,2)に示すような大きさの結石は、手術により摘出する必要があります。特に雄猫は、尿道が雌猫に比べ狭く、結石や膀胱炎による炎症産物(プラグ)が尿道を塞栓させることが多く、尿道閉塞を繰り返す個体や、尿道がもともと狭い個体には尿道を拡張する手術(会陰部尿道瘻形成術)を実施することもあります。

  2014/10/23   スタッフ

予防接種について

 予防接種についてお話しします。動物も、ヒトと同様に予防接種が必要となります。動物種ごとに接種すべきワクチンの種類は異なります。

 犬を飼育するにあたっては、「狂犬病予防法」という法律により、狂犬病ワクチンの接種が義務付けられております。では、狂犬病ワクチンのみを接種していれば問題ないかといえば、決してそうではありません。その他、感染すると重篤な症状を呈する種々の病原体として以下があります。

 犬で代表的な感染症の病原体として、ジステンパーウイルス、パラインフルエンザ、アデノウイルス(2種)、パルボウイルス、コロナウイルス、レプトスピラ(細菌)などがあります。猫では、白血病ウイルス、エイズウイルス、ヘルペスウイルス、カリシウイルス、パルボウイルスなどがあります。これらの病原体に対する抗体産生を促す製剤として混合ワクチンが製品化されております(猫エイズワクチンは、単体ワクチン)。初めてワクチンを接種する動物には、「追加免疫」といって、より確実な抗体価の上昇を得るため、複数回接種を推奨しております。初年度以降は、基本的に年1回の接種となります。犬のパラインフルエンザウイルスは、フェレットにも感染するため、ワクチンを接種する必要があります。

  2007年のペットフード工業会のデータにより、国内の犬の推定飼育頭数から算出された狂犬病ワクチンの接種率は約40%であり、現在日本は狂犬病清浄国であるものの、WHOが提唱する流行を防ぐため必要とされる70%を大きく下回っております。狂犬病ワクチンですらこの接種率なので、混合ワクチンはさらに低い接種率であると考えられます。同時に、まだまだ上記の病原体を有する動物が存在する可能性があることを考慮すると、ワクチンを接種せず生活することは極めて無防備であります。

 また猫に関して、屋外で生活している個体は、屋内のみで飼育されている個体と比較して上記の病原体に感染している確率が高く、現在感染していなくとも今後感染するリスクがあります。外出する猫ちゃんはもちろんのこと、屋内のみで生活している個体においても、これらの病原体に暴露される可能性は決してゼロではありませんので、ワクチン接種をお薦めしております。 

    「百の治療よりも一の予防」を!

  2014/10/22   スタッフ

僧帽弁閉鎖不全症

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 前回は、猫の死因として多い病気についてご説明しました。今回は、犬の死因として多くみられる心臓病についてお話ししたいと思います。心臓病といっても数々の疾患が含まれ、大きく先天的な疾患(生まれつき持っている疾患)と後天的な疾患(生後、種々の原因により発症する疾患)に分類されます。中~高齢犬でみられる後天的な心疾患として最も多いのは弁膜症といわれる疾患です。

  犬および猫における心臓内部の仕組みは、ヒトとほとんど同じです(図1参照)。心臓内には、4つの部屋(左心房、左心室、右心房、右心室)があり、各部屋は房室弁または中隔という壁により仕切られております。左心房と左心室の間には僧帽弁、右心房と右心室の間には三尖弁という大きな弁があり、これらの弁が閉じることで血液が逆流するのを防止しております。この機構があることで我々の体もそうですが、効率良くまた心臓に負荷をかけることなく全身に血液を送り出しております。ところが、この弁が年齢的な問題などにより障害を受けてくると、正常に閉じることができなくなり、血液の逆流が生じます。僧帽弁で生じているものを僧帽弁閉鎖不全症、一方三尖弁で生じているものを三尖弁閉鎖不全症と呼びます。

 血液の逆流が軽度であれば、臨床症状を呈することも少ないのですが、逆流が重度になってくると様々な症状を呈します。僧帽弁逆流の場合、症状として多いのは「元気がない」、「食欲がない」、「痩せてきた」、「動きたがらない」、「息が荒い(呼吸促迫)」、「咳をする」、「舌が紫色になる(チアノーゼ)」などがあります。重度の三尖弁閉鎖不全では、「お腹が張ってきた」などを外貌を呈し、腹水の貯留がみられることがあります。これらの心疾患は血液検査、胸部X線検査、心電図検査および心臓超音波検査(図2参照)などの各種検査によりは診断が可能です。

  一部の施設では、こうした弁膜症に対する外科的な治療を実施しておりますが、リスクおよびコスト面を考慮すると、現実的には内科的な治療をまず実施することになります。もちろん、お薬による治療は、傷んだ弁そのものを治療するわけではないため根治的とはいえませんが、種々のお薬を使い分けることによって大幅に心臓の負担を軽減することができ、心疾患を有している動物でも寿命を全うすることが期待できます。したがって、早期診断、早期治療が重要となります。 

  一方、心疾患に対する治療は、症状が出てからでは手遅れなことが少なからずあります。聴診のみで心疾患の有無を判断することは困難ですが、聴診において心雑音や心調律(心臓のリズム)の異常が認められる動物には特に心臓の精密検査をお薦めしております。また、一部の犬種(キャバリアなど)では、比較的若齢で本疾患がみられることがあり、キャバリアでは10歳を超えるとほぼ100%の確率で僧帽弁閉鎖不全症が認められることが文献的に分かっているため、注意が必要です。

 
  2014/10/21   スタッフ

慢性腎臓病

 慢性腎臓病についてお話ししたいと思います。腎臓病には急性腎不全と慢性腎臓病があります。これは、経過による違いであり、簡単に言うと長年の時間経過とともにじわじわと悪化したのが慢性腎臓病です。一方、急性腎不全により急激な腎臓へのダメージが、そのまま残存したことにより慢性化し、慢性腎臓病にいたるケースもみられます。  

   慢性腎臓病は、特に猫で非常に多い泌尿器系の疾患であり、高齢動物では注意する必要があります。初期症状として、「たくさんお水を飲む」、「たくさんおしっこをする」、「色の薄いおしっこをする」などがあります。進行すると体内の水分が奪われ脱水状態となり、体重減少、食欲低下~廃絶、嘔吐、「息が臭い」などの症状を示します。末期的になると、乏尿といって腎臓での尿産生が停止し、貧血などを合併した後、最終的に体内の老廃物を排出できないため尿毒症となり死の転帰を迎えます。腎臓の恐ろしいところは、肝臓などの再生能力がみられる臓器と異なり、ひとたび腎不全に陥ると残念ながら機能が甦ることはほとんどないことです。

   軽度の腎障害は症状が見逃されることも多く、尿検査や血液検査の所見から診断することになりますが、疾患には常に検査の限界がつきまといます。腎臓のスクリーニング検査として一般的に実施されている血中尿素窒素(BUN)やクレアチニン(Cre)は感度の高い検査ではないため、正常値であっても腎不全ではないと言うことはできません。逆に、参照値を超えている場合は、腎臓の大多数(70%以上)が障害を受けている可能性があります。血液検査で正常値であっても、比重の低い尿(低比重尿)がみられる場合、腎不全に警戒する必要があります。但し、尿検査および血液検査のいずれも一度の検査では腎疾患と確定判断することは困難なため、十分な水分摂取をおこなった後、再検査を実施する必要があります。

   上述の通り、ダメージを受けた腎臓を再生させることは困難であるため、慢性腎臓病との診断が下った場合は、とにかく腎臓を少しでも長持ちさせること考える必要があります。過去の研究データから、腎不全罹患動物において低リン食を摂取させた方が、リンを制限していない一般食よりも生存期間が延長することが知られているため、リンおよびタンパク質を制限した食事療法は極めて重要となります。その他、薬物治療として腎血管を拡張させる血管拡張薬、食事中に含まれるリンを吸着させる、いわゆる吸着剤の使用などがあります。食事療法および薬物療法で、一般状態の維持が困難な動物には、輸液療法を実施します。

  慢性腎臓病の動物での定期健診はもちろんですが、みため元気な動物達にも健康診断をお薦めしております。ヒトでも、一定年齢以上になると年に1回程度、健診があるように、当然のことながら動物でも重要と思われます。犬および猫の1年間はヒトの4年間以上に相当するため、年に1回の健康診断はヒトの4年に1回程度であり、これだけで十分とは言えない面もありますが、最低年に1回はお薦めしております。

  2014/10/20   スタッフ
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