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肥満について

 ヒトでも「メタボリックシンドローム」として社会的問題となっているように、動物でも肥満には注意する必要があります。必ずしも「肥満=病気」ではありませんが、肥満が各種病気の予備軍になるのは動物も同じであり、肥満による弊害として、糖尿病、心臓への負担増大、排便障害(便秘)、関節疾患、脊髄疾患および高脂血症などがあります。肥満の原因として、元来、その個体において脂質代謝に問題があることもあるため、肥満の原因を探ることも重要となります。

 特に、犬および猫では、体型の指標として、肋骨の浮き具合などを参考にするBCS(ボディ・コンディション・スコア)といわれる方法や、動物用機器による体脂肪の測定および頭の周囲や手足の長さから計測ソフトを用いて理想体重を算出する方法などがあります。

 ヒトでは、近年エクササイズによる肥満の予防および改善が盛んに行われておりますが、同様のことを動物で実施するのには困難な点があります。一方、お散歩などで適度な運動を行うことはもちろん動物(特に犬)でも重要ですが、運動以上に重要となるのが日々の食事です。

 まず、その個体に合った食事量にする設定する必要があります。また、「この位のおやつなら大丈夫だろう。」というようについ考えがちですが、人並みに大きな動物は別として、一般的な犬および猫の体格は、ヒトと大きくことなることを知っておく必要があります。例えば、5kg程度のワンちゃんに、毎日2センチ角程度のチェダーチーズを与えることは、成人が毎日ハンバーガーを1個食べるのと同程度のカリロー計算となります。その他の間食も、知らず知らずのうちにカロリーオーバーとなっている可能性があるので、チェックが必要です。

 フードは、どれを選べば良いか迷う程たくさんの種類がありますが、「一般食」つまり量販店などで市販されているフードでコントロールが困難な動物には、「療法食」といわれる減量用の特殊なフードをお薦めしております。

 もちろん、痩せ過ぎはもっと深刻な問題ですが、動物でも「肥満は万病のもと」と考える必要があります。

  2014/11/13   スタッフ

歯石について

 動物にもヒトと同様に歯周病があります。口腔内は元来、細菌の巣でありさらに食べ物のカスが歯間に残存することで、これらを餌とする細菌が増殖し、やがて歯石となります。歯石が付着して、口臭を発するだけならまだよいのですが、歯周病は徐々に進行し、歯肉の炎症や、歯を支える歯槽骨が溶解することで歯茎が後退し、歯が脱落することもあります。さらに、進行すると下顎では顎の骨が折れたり、上顎では歯が抜けた穴が鼻腔へと繋がることで、膿性鼻汁の分泌や、目の下が腫れたり、膿が破裂することもあります。口腔内の細菌が血液中に入り込むと、敗血症といわれる状態になり、命を脅かすこともあり得ます。

 細菌の増殖を抑えるために、一時的に抗生物質を使用することがありますが、根本的な治療は、歯のクリーニングです。既に付着している歯石は、ご自宅で除去することは困難なので、スケーラーと呼ばれる器具を用いて、歯石除去(スケーリング)を行いますが、動物ではヒトのように麻酔をかけずに行うことは不可能であり、全身麻酔にて実施することになります。したがって、麻酔に耐えうるか否か慎重に検討する必要があります。処置時、動揺が顕著な歯は、抜歯する必要があります。

 予防法は、やはりヒトと同様にご自宅における日々のお手入れです。最近は、様々なグッズが販売されておりますが、その中でもブラッシングは基本となります。ブラッシングが困難な動物には歯石を付着しにくくする固いフードや、デンタルケア用のフード、歯磨き用のペースト、歯磨きガムなどをお薦めしております。

歯石.png

左:スケーリング前の写真。黄土色の歯石が大量に付着しております。

右:処置後の写真。きれいに歯石が除去されました。

  2014/11/10   スタッフ

膝蓋骨脱臼

  本日は、膝の疾患についてお話しします。ヒトと同様に、動物にも膝のトラブルがあります。その中で、先天的な疾患として比較的多いのが、膝蓋骨脱臼です。

  太ももの芯である大腿骨の末端には、膝蓋骨といわれる小さな骨が納まるためのしっかりとした溝(滑車溝)が形成されております。しかしながら、この溝が生まれつき浅かったり、膝蓋骨を牽引している大腿四頭筋といわれる太ももの筋肉の一部が萎縮したり、脛骨(すねの骨)が内側に向いているなどの原因により脱臼が起こります。内側に脱臼したものを内方脱臼、外側に脱臼したものを外方脱臼といいますが、小型犬では圧倒的に前者の方が多くみられます。好発犬種としてポメラニアン、トイプードル、ヨークシャーテリア、マルチーズ、チワワなどが知られております。

 膝蓋骨脱臼の程度は様々であり、膝蓋骨がたまに脱臼する程度のもの、足の曲げ伸ばしによりはまったり外れたりするもの、常時外れた状態のもの、さらに膝蓋骨をはめようにもはまらない状態まであります。診断は、触診およびX線検査により可能です。軽度であれば、痛みなどの症状を呈することは少ないのですが、重度になると痛みや不自然な歩行を示すことがあります。症状が軽度の場合は、内科療法により鎮痛剤等を服用することで改善が得られることもあります。一方、脱臼の状態が長く続くと後ろ足の骨が、弓なりに変形してくるなどの異常が出てくるため、症状および脱臼が重度であれば、根治的な治療として早期の手術をおすすめ致します。

 膝蓋骨脱臼を整復する手術法として多くの術式が知られておりますが、当院では滑車溝に金属の板を埋め込み、堤防を築くことで膝蓋骨の脱臼を防ぐ方法を主に採用しております。

パラガード.png

左:術前X線画像(キャバリア、1歳齢)。両側の膝蓋骨が内側に変位(赤丸)しているのが分かります。

右:同症例の術後X線画像。金属板の装着により両側の内方脱臼が整復されました。(手術は片側ずつ計2回実施しております。)

  2014/11/08   スタッフ

異物の誤食

 ヒトにみられる疾患の多くが動物にもありうるというお話しをさせて頂きました。異物の摂食は、小さな子どもが近くにある物を誤食するのと同様に動物でもみられるトラブルです。ヒトと異なるのは、動物は大人の個体でも誤食が起き得る点です。

 誤食を速やかに気付き、適切な対応をさせて頂くことでトラブルが解決しますが、異物の種類や、異物が停溜した部位によっては、合併症を引き起こし、重篤な障害を引き起こす場合もあります。生体内で消化される物質であれば問題ないかというと、決してそうではありません。タマネギ、チョコレート、ブドウ(特に皮の部分)などは、中毒を引き起こす代表的な食品です。

 異物の摂食における症状は、誤食した物により異なりますが、嘔吐や「吐こうとするけど吐けない(えずき)」、「お腹が痛そう」、下痢などは一般に多くみられます。逆にいえば、これらの症状がみられる場合は、異物の可能性も考える必要があります。一方、レトリバー系の大型犬などでは、「おしぼり」を1本丸のみしても胃の出口が完全に閉塞されなければ嘔吐を呈さないこともあるため、明らかな症状がない場合、異物による症状か否かの判断には注意を要します。

 異物の有無を探る上で、飼主様のお話(稟告)がきわめて重要になります。したがって、心当たりがある飼主様には、「いつ、どこで、何を、どのように(どの位)食べましたか?」は、常々お尋ねしております。急性に中毒などを発症した場合や、重度の脱水がある場合を除き、血液検査では異常が検出されることは少ないため、異物の有無を診断する方法として、画像診断が有用となります。しかしながら、X線を透過するプラスチックなどの場合、明確に異物の存在を判定することが困難なこともあります。この場合、さらに腹部超音波検査を実施することで、異物の有無を高い確率で疑うことが可能となります(大量のフードを食べていたり、胃腸内にガスが充満している場合を除く)。これでもはっきりしない場合は、ヒトで実施されるのと同様に、バリウム等を飲ませ、消化管造影検査を実施することもあります。

 異物が強く疑われる場合、または異物と確定診断した場合は、様々な処置が必要となります。先端が鋭利ではなく消化されない異物の場合、時間経過とともに腸内を出口(肛門)へ向かって流れていくことが予想されれば、経過観察とすることもあります。一方、誤食してからの時間が短く、鋭利ではなく、生体内での化学反応も乏しい物質の場合、嘔吐を引き起こす薬剤を投与して、強制的に吐かせる処置が可能な場合もあります。

 針など先端が鋭利な異物は、胃壁や腸壁を穿孔(貫通)する可能性があるため、緊急的に摘出する必要があります。摘出する方法として、内視鏡と小さな鉗子を用いて摘出できる場合もありますが、異物が大きかったり、つかむ場所が無い物体であったり、十二指腸より遠くに停溜している場合は、手術により開腹して摘出ことになります。

 過去に誤食した経験がある動物は、繰り返すことが多く特に注意が必要です。動物にとって異物となる物を近くに置かないなど、飼主様側での予防も重要となります。           

  2014/11/06   スタッフ

椎間板ヘルニア

 ここ数日は比較的暖かいものの、そろそろ冬の訪れの気配です。動物もヒトと同様に、季節により病気の数が増減します。十分に体が暖まっていないうちに急激な運動をすることで、体の各所を痛めることがヒトでもよくありますが、動物でこれに少し近い神経の病気として本日は椎間板ヘルニアについてお話ししたいと思います。

 疾患名に付されている「椎間板」とは、背骨と背骨の間にある軟骨であり、脊椎に加わる衝撃を緩和させるクッションの役割をしているとされます。動物に最も多い脊椎の疾患は、「椎間板ヘルニア」であり、椎間板に何らかの衝撃が加わることで本来納まっているスペースから椎間板が上(背中側)へ飛び出し、脊椎内を走る神経を圧迫することで、各種症状を呈します。脊椎には、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎および尾椎があり、どの場所で神経の圧迫が起きたかで症状は異なり、痛み、前肢や後肢の麻痺、自力で排泄ができないなどの症状を呈します。

 この病気を頻発する犬種として、ダックスフント、トイプードル、ペキニーズ、ビーグルなどが知られておりますが、当院において、これらの症状で受診する動物の9割は、ダックスフンドのワンちゃんです。もともと持病があり、じわじわと悪化してくることもありますが、「突然、後ろ足が立たなくなった」などで来院されることが多いです。

 この病気は、単純なX線で診断することはできず、疾患と病変部位を特定するには全身麻酔下における脊髄造影検査またはCT検査が必要となります。

 圧迫が軽度の場合は、跛行(びっこ)を示さないこともあり、背中を丸まるなど、痛みのみを呈することがあります。この場合は、安静の維持や、痛み止めや抗炎症薬といわれるお薬を使用した治療(内科療法)で様子をみることもありますが、最初は軽い症状でも、日を追うごとに悪化することもあるため、注意が必要です。

 圧迫が中等度の場合は、前肢または後肢が不完全な麻痺(不全麻痺)を呈し、起立歩行可能な場合と不可能な場合とがあります。歩行困難な場合は、内科療法での治療効果が乏しい場合があり、神経の圧迫を解除する手術をおすすめすることもあります。

 圧迫がより重度の場合は、前肢または後肢が完全な麻痺(全麻痺)を示し、起立することはおろか、自力で排尿ができなかったり、患肢をつねっても反応がない(深部痛覚の消失)などの徴候を示し、早急な手術が必要となります。

 毎日のようにスクワットをしても腰に何ら問題を示さないヒトがいるのと同様に、アジリティーなど、ハードなスポーツをしているワンちゃんが必ずしもこの病気になるわけではないことを考慮すると、単に運動のみにより発症するわけではなさそうです。 しかしながら、もともと椎間板自体に問題があった個体や、胴が長いなどの形態的を有する問題を有する動物、軟骨異栄養犬種といわれる前述の犬種、そして過去にこの病気の経験がある動物は、特に注意する必要があります。

  2014/11/04   スタッフ

外耳炎

  外耳炎についてお話し致します。外耳炎は、外側から鼓膜までの外耳道内に、細菌や真菌(カビが蔓延ることで発症する病気です。我々の耳垢も決して無菌的ではなく、探せば少々の細菌などがいるのと同じことが動物にもいえます。外耳炎を動物の耳垢を顕微鏡で観察すると、多くに個体で細菌やマラセチア(カビの一種)といわれる病原体がみられます。罹患した動物の耳が匂うのは、これらの病原体による発酵臭と思われます。

 外耳炎が軽度であれば、こまめに耳のお手入れをすることで良好に経過することも多いですが、耐性菌(抗生物質が効かない細菌)の出現やアトピーを持病をして持っている個体では、重篤化または難治性となることがあります。重症な個体では、耳道壁が肥厚し、綿棒が通らない程に耳道が狭くなります。また、病変が鼓膜を越えてさらに中耳まで及ぶこともあります。

 かつては、耳の垂れた犬種は湿気が外耳道内こもることで、細菌や真菌が繁殖しやすくなり、外耳炎が多いとされておりましたが、現在では、飼育犬種の変遷もあってか、耳の立った犬でも同様の割合で本疾患がみられている印象です。この疾患も、症状はやはり「かゆみ」です。「耳が匂う」ことはさることながら、「頭や首をふる」や「耳を手足でかく」、「首をかしげる」などは、耳のトラブルから起きている可能性があります。

 治療は、やはり「耳のおそう」じが重要となります。耳のお手入れの方法もご家庭で実施可能なものから、動物病院でないと困難なものまで種々あります。特に、耳道の損傷を考慮すると、ご自宅での綿棒を使用したお手入れはあまりお薦めできません。根本的な治療は、原因菌を一掃または減少させることであるため、おそうじと合わせて抗生物質や抗真菌薬を耳に直接投与したり、または経口薬の投与をします。一方、かゆみが激しい場合は、症状を落ち着かせるためにステロイドといわれる薬剤を一時的に使用することもありますが、長期に亘る使用はあまり推奨できません。既に耳道が狭窄してしまっており、耳のおそうじも困難動物には、外科的な治療により耳道を再建あるいは、完全に切除することもあります。しかしながら、外耳道を再建する手術は、あくまで「メンテナンスを容易にする」ための手術であり、術後、耳のお手入れが不要になるわけではありません。

 耳のトラブルは、夏場に比べ今の時期は症状が落ち着いている動物も多いですが、基本的には季節に関係ない疾患なので、我々が時々耳そうじをするのと同様に、動物もこまめなメンテナンスが必要です。

  2014/10/29   スタッフ

アトピー

 暑い夏が終わり、心疾患や皮膚疾患を有する動物は大分すごし易い季節になったのではないでしょうか。今回は、アトピー性皮膚炎についてお話し致します。

  ヒトと同様に、動物にもアトピーがあります。この病気は、体内の免疫機構が関与することでアレルギー反応がおき、発症します。症状は何といっても「かゆみ」です。かゆみを起こす皮膚の病気は、細菌、真菌(カビ)および寄生虫などによる皮膚炎等々、アトピー性皮膚炎以外にもたくさんありますので、まずはその個体が本当にアトピー性皮膚炎なのかを診断する必要があります。その他の疾患を除外し、発症年齢、飼育環境および病変部位などを勘案し、アトピー性皮膚炎を疑います。アトピー性皮膚炎には、原因となるアレルゲンが存在するため、原因物質のには特殊な血液検査を実施することもあります。

 自己免疫を関係する疾患ゆえ、完治させることは困難であり、かゆみとの戦いになります。しかしながら、獣医療においても、かゆみを軽減させる様々な治療が実施されるようになってきました。毎日口にするフードは、極めて大きな因子となります。また、皮膚のお手入れ(シャンプー)も重要です。一般のフードやシャンプーは、量販店に行くとどれを買えばよいか迷うほど、たくさんの種類がありますが、アトピー性皮膚炎に罹患している個体には、特別食(処方食)や薬用シャンプーをお薦めしております。その理由として、フードやシャンプーの変更により薬物の助けをなしに症状の改善が得られる場合があるからです。一方、ヒトの食べ物やおやつなどを与えていると、いくらお薬を使っていても本末転倒になりかねません。それでもかゆみが落ち着かない場合は、お薬の力を借りざるを得ないと思われます。

 古くからヒトにおいても使われている薬剤として、ステロイド(外用、内服)があります。非常に切れ味の良いお薬であり、短期間、適正な薬用量で使用する分には優れたお薬ということができます。しかしながら、長期に亘る使用は、肝障害などの副作用を考慮するとお勧めできません。ステロイドを使用している間はかゆみが落ち着いていても、中止すると再発する場合は、屯服的な使い方(かゆい時だけ使用する)や、他剤への変更を検討する必要があります。

 抗ヒスタミン剤は、ステロイドに比べ体への負担が小さいことは優れた点といえます。しかしながら、動物ではヒトほど鮮明な効果が期待できない側面もあります。その他の内服薬として、シクロスポリン(免疫抑制剤)があります。本剤は、効果が十分期待できると同時に、ステロイドと比較して、長期の使用でも副作用が比較的小さいという利点があります。難点は、薬価が高いことです。

 その他、インターフェロンの注射や、減感作療法(アレルゲンを薄めた薬剤を投与し、体を慣れさせる)の注射による治療があります。薬剤以外では、サプリメントを用いた治療があります。

 

  2014/10/25   スタッフ
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