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去勢手術と避妊手術

 よく知られた話しではありますが、去勢手術と避妊手術について少し書いてみます。生殖器は、神から与えられた臓器ではありますが、必要に応じてこれらを切除する手術があります。簡単にいうと、去勢手術は精巣を、避妊手術は卵巣と子宮(卵巣のみ切除する方法もあります)を外科的に切除することです。

 この手術をする目的は、いくつかあります。動物種により目的は若干異なる面もありますが、ひとつは動物行動的な問題を改善するためです。雄であれば、あちらこちらで匂いつけのためにオシッコをちょこちょことする行動(マーキング)、雌に向かっていく気性が強すぎる、けんか癖が強いなど、ヒトと共存していくには障壁となりうる様々な問題があります。雌であれば、特に猫でもだえる様なしぐさをし、異常な声を発するなど、発情時に特有の行動があげられます。特に外出をする雄猫では、野良猫の繁栄を防止するため、また雌猫の場合は、不用意な妊娠を回避することを目的として施術することがあります。    

 一方、未然に大病の発生を防止する予防策として実施するケースもあります。犬を例にとってみると、雄の場合、年齢を重ねていくと、ヒトと同様に前立腺肥大(※クジラ、アリクイ、アルマジロ、ナマケモノの仲間を除いて発達の違いはあるものの、ほとんどの生物に前立腺があります)が起こることがあります。また、精巣自体が腫瘍化することがあるため、病気になる前に生殖器を切除してしまおうという考え方があります。

 雌犬では中高齢期になると多くなる病気のひとつに子宮蓄膿症があげられます。これは、名前の如く、子宮が膿でパンパンになり、正常であれば直径が5mmにも満たない子宮が巨大なソーセージ位に腫大する病気です。元気消失、多飲多尿、嘔吐、陰部からの排膿などの症状を呈し、放っておけば腎不全、腹膜炎、敗血症などを併発し、死亡することもあります。また、子宮の先端についている卵巣が腫瘍化することもしられております。卵巣自体に問題がなくても、ここから分泌されるホルモンの問題により、乳腺や腟などに様々な病変を起こすこともあります。犬では、生まれてから2回目の発情が来る前に避妊手術を実施することで、乳腺腫瘍の発生を有意に低下させることができるという報告もあります。

 第三に、治療の一環として実施する場合です。これには前述のような前立腺のトラブルや生殖器の腫瘍以外にも、尿道を操作する手術、会陰ヘルニア、肛門周囲の腫瘍等々があります。子宮蓄膿症の場合、実施する手術の内容は、通常の避妊手術とほぼ変わりませんが、病気になってから行う手術は、術中および術後のリスクが健常時とは全く異なります。

 手術をすべきか否かは、最終的に飼主様に委ねるしかありません。健康な動物にメスを入れるわけですから、全身麻酔などのリスクと、手術によって得られるメリットを天秤がけする必要があります。去勢または避妊手術に際しては、予め必要なワクチンを接種して頂き、生まれてから一定日数経過後で、本人が万全の状態である時に実施することをお薦め致します。

  2014/12/05   スタッフ

動脈血栓塞栓症

 久しぶりのブログ更新です。昨日、今日と暖かい日でしたが、これから冬も本番へ向かおうとしております。季節ごとに多い疾患について触れてきましたが、動物でも寒さと血のめぐりに関連があることは否定できません。血液の循環が滞ったり、体内で異常な血液の流れが起こると血の塊(血栓)が形成されやすくなります。

 ヒトでは、脳血管に血栓が詰まることによる脳梗塞や、心臓を養っている冠血管に詰まることによる心筋梗塞が圧倒的に多いです。一方、動物では内股へ走る動脈を閉塞することが多くみられ、この疾患を動脈血栓塞栓症と呼びます。もちろん、その他の部位で起こることがないわけではありません。

 本疾患は、心筋症(心臓を構成する心筋が異常な形態を呈する)を有する猫において高頻度でみられます。本疾患に罹患した猫の多くは、「朝は元気に歩いていたが、帰宅したら後ろ足を引きずっており、足先が冷たい。」などを主訴に来院します。ですので、突然発症する病気といえます。

 診断は、臨床症状に基づき各種検査を行い、超音波検査により血管内に血栓が認められれば、確定します。血栓症の治療法として様々な方法が報告されております。血管に詰まった血栓を摘出する外科的療法や、血栓溶解剤を言われる薬剤を全身または局所投与して、血栓を溶かす血栓溶解療法や、ヘパリンなどの薬剤を用いてこれ以上血栓を作らせないようにする抗血栓療法などがあります。

 血栓症発症時の検査時において、心臓疾患が発覚することが多いのが現状です。したがって、明らかな症状で出てから検査をするのではなく、特に猫の場合、一定の年齢に達した個体や、聴診にて異常が認められる個体は、特に定期的な検診をお薦めしております。血液をかたまりにくくする薬剤などを用いることで、血栓症のリスクを回避できる可能性があるため、心筋症があると分かった場合は、速やかに内服薬の使用をおすすめ致します。

  2014/11/29   スタッフ

薬とサプリメント

  ヒトにおいて非常に多くのサプリメントが市販されており、まさに氾濫している昨今です。動物のサプリメントも同様に、近年様々な製品が販売されております。

 薬とサプリメントの違いのひとつは、法律面の問題です。医薬品は、ヒト用および動物用を問わず、薬事法により規制されております。その製造および販売は、この法律により厳しく制限され、効果または効能がはっきりしない製品を販売することはできません。したがって、医薬品、医薬部外品および化粧品は、効果および効能を添付文書に記載することができ、また記載すべきなのです。日本におけるサプリメントの位置づけは、「食品」であり、特定保健用食品または栄養機能食品に属する製品以外は、効果効能を記載できません。

 病気に対して、どのタイミングでお薬を開始するか、判断が難しいこともありますし、飼主様が「薬は使いたくない。」という場合もあります。そういうケースでは、薬以外にサプリメントによる治療をおすすめすることもあります。効能がはっきりしないサプリメントも決して少なくありませんが、一方、科学的根拠が豊富なサプリメントがあるのも事実であり、積極的に治療へ介入させることもあります。サプリメント自体は、動物病院としても正しい情報を飼主様に提供させて頂くと同時に、消費者である飼主様も、巷にあふれるサプリメントに惑わされ過ぎないようにする必要があります。

  2014/11/19   スタッフ

肥満について

 ヒトでも「メタボリックシンドローム」として社会的問題となっているように、動物でも肥満には注意する必要があります。必ずしも「肥満=病気」ではありませんが、肥満が各種病気の予備軍になるのは動物も同じであり、肥満による弊害として、糖尿病、心臓への負担増大、排便障害(便秘)、関節疾患、脊髄疾患および高脂血症などがあります。肥満の原因として、元来、その個体において脂質代謝に問題があることもあるため、肥満の原因を探ることも重要となります。

 特に、犬および猫では、体型の指標として、肋骨の浮き具合などを参考にするBCS(ボディ・コンディション・スコア)といわれる方法や、動物用機器による体脂肪の測定および頭の周囲や手足の長さから計測ソフトを用いて理想体重を算出する方法などがあります。

 ヒトでは、近年エクササイズによる肥満の予防および改善が盛んに行われておりますが、同様のことを動物で実施するのには困難な点があります。一方、お散歩などで適度な運動を行うことはもちろん動物(特に犬)でも重要ですが、運動以上に重要となるのが日々の食事です。

 まず、その個体に合った食事量にする設定する必要があります。また、「この位のおやつなら大丈夫だろう。」というようについ考えがちですが、人並みに大きな動物は別として、一般的な犬および猫の体格は、ヒトと大きくことなることを知っておく必要があります。例えば、5kg程度のワンちゃんに、毎日2センチ角程度のチェダーチーズを与えることは、成人が毎日ハンバーガーを1個食べるのと同程度のカリロー計算となります。その他の間食も、知らず知らずのうちにカロリーオーバーとなっている可能性があるので、チェックが必要です。

 フードは、どれを選べば良いか迷う程たくさんの種類がありますが、「一般食」つまり量販店などで市販されているフードでコントロールが困難な動物には、「療法食」といわれる減量用の特殊なフードをお薦めしております。

 もちろん、痩せ過ぎはもっと深刻な問題ですが、動物でも「肥満は万病のもと」と考える必要があります。

  2014/11/13   スタッフ

歯石について

 動物にもヒトと同様に歯周病があります。口腔内は元来、細菌の巣でありさらに食べ物のカスが歯間に残存することで、これらを餌とする細菌が増殖し、やがて歯石となります。歯石が付着して、口臭を発するだけならまだよいのですが、歯周病は徐々に進行し、歯肉の炎症や、歯を支える歯槽骨が溶解することで歯茎が後退し、歯が脱落することもあります。さらに、進行すると下顎では顎の骨が折れたり、上顎では歯が抜けた穴が鼻腔へと繋がることで、膿性鼻汁の分泌や、目の下が腫れたり、膿が破裂することもあります。口腔内の細菌が血液中に入り込むと、敗血症といわれる状態になり、命を脅かすこともあり得ます。

 細菌の増殖を抑えるために、一時的に抗生物質を使用することがありますが、根本的な治療は、歯のクリーニングです。既に付着している歯石は、ご自宅で除去することは困難なので、スケーラーと呼ばれる器具を用いて、歯石除去(スケーリング)を行いますが、動物ではヒトのように麻酔をかけずに行うことは不可能であり、全身麻酔にて実施することになります。したがって、麻酔に耐えうるか否か慎重に検討する必要があります。処置時、動揺が顕著な歯は、抜歯する必要があります。

 予防法は、やはりヒトと同様にご自宅における日々のお手入れです。最近は、様々なグッズが販売されておりますが、その中でもブラッシングは基本となります。ブラッシングが困難な動物には歯石を付着しにくくする固いフードや、デンタルケア用のフード、歯磨き用のペースト、歯磨きガムなどをお薦めしております。

歯石.png

左:スケーリング前の写真。黄土色の歯石が大量に付着しております。

右:処置後の写真。きれいに歯石が除去されました。

  2014/11/10   スタッフ

膝蓋骨脱臼

  本日は、膝の疾患についてお話しします。ヒトと同様に、動物にも膝のトラブルがあります。その中で、先天的な疾患として比較的多いのが、膝蓋骨脱臼です。

  太ももの芯である大腿骨の末端には、膝蓋骨といわれる小さな骨が納まるためのしっかりとした溝(滑車溝)が形成されております。しかしながら、この溝が生まれつき浅かったり、膝蓋骨を牽引している大腿四頭筋といわれる太ももの筋肉の一部が萎縮したり、脛骨(すねの骨)が内側に向いているなどの原因により脱臼が起こります。内側に脱臼したものを内方脱臼、外側に脱臼したものを外方脱臼といいますが、小型犬では圧倒的に前者の方が多くみられます。好発犬種としてポメラニアン、トイプードル、ヨークシャーテリア、マルチーズ、チワワなどが知られております。

 膝蓋骨脱臼の程度は様々であり、膝蓋骨がたまに脱臼する程度のもの、足の曲げ伸ばしによりはまったり外れたりするもの、常時外れた状態のもの、さらに膝蓋骨をはめようにもはまらない状態まであります。診断は、触診およびX線検査により可能です。軽度であれば、痛みなどの症状を呈することは少ないのですが、重度になると痛みや不自然な歩行を示すことがあります。症状が軽度の場合は、内科療法により鎮痛剤等を服用することで改善が得られることもあります。一方、脱臼の状態が長く続くと後ろ足の骨が、弓なりに変形してくるなどの異常が出てくるため、症状および脱臼が重度であれば、根治的な治療として早期の手術をおすすめ致します。

 膝蓋骨脱臼を整復する手術法として多くの術式が知られておりますが、当院では滑車溝に金属の板を埋め込み、堤防を築くことで膝蓋骨の脱臼を防ぐ方法を主に採用しております。

パラガード.png

左:術前X線画像(キャバリア、1歳齢)。両側の膝蓋骨が内側に変位(赤丸)しているのが分かります。

右:同症例の術後X線画像。金属板の装着により両側の内方脱臼が整復されました。(手術は片側ずつ計2回実施しております。)

  2014/11/08   スタッフ

異物の誤食

 ヒトにみられる疾患の多くが動物にもありうるというお話しをさせて頂きました。異物の摂食は、小さな子どもが近くにある物を誤食するのと同様に動物でもみられるトラブルです。ヒトと異なるのは、動物は大人の個体でも誤食が起き得る点です。

 誤食を速やかに気付き、適切な対応をさせて頂くことでトラブルが解決しますが、異物の種類や、異物が停溜した部位によっては、合併症を引き起こし、重篤な障害を引き起こす場合もあります。生体内で消化される物質であれば問題ないかというと、決してそうではありません。タマネギ、チョコレート、ブドウ(特に皮の部分)などは、中毒を引き起こす代表的な食品です。

 異物の摂食における症状は、誤食した物により異なりますが、嘔吐や「吐こうとするけど吐けない(えずき)」、「お腹が痛そう」、下痢などは一般に多くみられます。逆にいえば、これらの症状がみられる場合は、異物の可能性も考える必要があります。一方、レトリバー系の大型犬などでは、「おしぼり」を1本丸のみしても胃の出口が完全に閉塞されなければ嘔吐を呈さないこともあるため、明らかな症状がない場合、異物による症状か否かの判断には注意を要します。

 異物の有無を探る上で、飼主様のお話(稟告)がきわめて重要になります。したがって、心当たりがある飼主様には、「いつ、どこで、何を、どのように(どの位)食べましたか?」は、常々お尋ねしております。急性に中毒などを発症した場合や、重度の脱水がある場合を除き、血液検査では異常が検出されることは少ないため、異物の有無を診断する方法として、画像診断が有用となります。しかしながら、X線を透過するプラスチックなどの場合、明確に異物の存在を判定することが困難なこともあります。この場合、さらに腹部超音波検査を実施することで、異物の有無を高い確率で疑うことが可能となります(大量のフードを食べていたり、胃腸内にガスが充満している場合を除く)。これでもはっきりしない場合は、ヒトで実施されるのと同様に、バリウム等を飲ませ、消化管造影検査を実施することもあります。

 異物が強く疑われる場合、または異物と確定診断した場合は、様々な処置が必要となります。先端が鋭利ではなく消化されない異物の場合、時間経過とともに腸内を出口(肛門)へ向かって流れていくことが予想されれば、経過観察とすることもあります。一方、誤食してからの時間が短く、鋭利ではなく、生体内での化学反応も乏しい物質の場合、嘔吐を引き起こす薬剤を投与して、強制的に吐かせる処置が可能な場合もあります。

 針など先端が鋭利な異物は、胃壁や腸壁を穿孔(貫通)する可能性があるため、緊急的に摘出する必要があります。摘出する方法として、内視鏡と小さな鉗子を用いて摘出できる場合もありますが、異物が大きかったり、つかむ場所が無い物体であったり、十二指腸より遠くに停溜している場合は、手術により開腹して摘出ことになります。

 過去に誤食した経験がある動物は、繰り返すことが多く特に注意が必要です。動物にとって異物となる物を近くに置かないなど、飼主様側での予防も重要となります。           

  2014/11/06   スタッフ
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