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門脈-体循環シャント

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 さぼり癖が出てしまい、久方ぶりのブログ更新になってしまいました。笑。

夏も本番となってしまいましたが、ワンちゃん、ネコちゃんも熱中症には気をつけましょう。今日は、先天的な原因により起こる門脈-体循環シャント(PSS)という病気についてお話し致します。

 PSSは、大半が犬ですが、稀に猫でもみられます。若齢で本疾患がみつかる多くの場合、たいてい「この子は、体重が増えない」、「時々吐く」、「震える」、「発作を起こす」、「便がゆるい」、「下痢」、「尿が汚い色をしている」などの症状で来院されます。これらの症状は、PSS以外の原因でもよく起こるため、原因が何なのかは、しっかり検査をしなければ分かりません。例えば、血液検査も通常の不妊手術で実施するような内容では、発見されないことも多く、それらの項目に異常がないからということで、不妊手術を実施してしまい、その後、麻酔からの覚醒が異常に悪いなどのトラブルが起こることもあります。

 口から摂取した一部の栄養素は、腸から腸間膜静脈を通り、門脈という血管に集まり、一旦肝臓へ行きます。そして、肝臓でタンパクを合成したり、アンモニアなどの毒素を解毒し、心臓に戻って行きます。ところが、この門脈が生まれつき異常な形態を示す個体がおり、肝臓を迂回して静脈へ流れてしまうのが、このPSSです。したがって、PSSの個体では、肝臓へ流入する血液が乏しいため、肝臓が未発達であり、X線検査などで、肝陰影の小さくみられます。糖をグリコーゲンとして貯蔵したり、タンパク合成したり、有害物質を解毒する肝臓が未発達なため、さまざまなトラブルが生じます。

 PSS自体は、診断がすごく難しい疾患ではありません。本症が疑われる場合、通常の血液検査に加え、食事負荷試験(食事摂取前と摂取後でアンモニアと総胆汁酸の測定する)をと呼ばれるものを追加し、さらにX線検査および超音波検査(カラードプラによる血流方向の確認(図1,2 ))など、今の獣医学では当たり前となっている検査を実施することで、かなり高い精度で診断することが可能です。

 以上のような検査でPSSまたは何らかの肝機能障害と確定され、CT検査や門脈造影検査などにより短絡血管が同定され、かつ肝臓自体に余力があれば、外科的治療により短絡血流を遮断することで肝臓の発育を促し、肝機能を改善させることが可能です。しかしながら、年単位でこの病気が放置されていたり、肝硬変という状態に陥っていたり、多数の短絡血管がみられたり、短絡血管が肝臓の中に深く入り込んでいる場合は、手術が不可能なこともあります。

 CT検査は、3次元的な情報が得られ、手術を前提とする場合には極めて有用であります。しかしながら、その前段階として通常の動物病院レベルでも実施可能な諸検査により少なくとも本疾患を強く疑うまたは仮診断することが可能であるため、上記の様な症状がひとつでもある場合は、動物病院にご相談することをおすすめ致します。

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