犬糸状虫(フィラリア)症

 犬糸状虫(フィラリア)症は、蚊が媒介する寄生虫が動物の心臓内に住み着くことにより起こる疾患です。フィラリアの子虫を持った蚊が動物を刺す時、子虫も同時に動物の血液中に入り込むことで寄生が成立します。血液中に入りこんだ子虫は、何ヶ月もの時間を経てそうめん様の糸状の成虫となり、心臓の肺動脈と言われる場所へ寄生します。

  犬の場合、フィラリア成虫が数隻寄生したのみでは症状を示すことは少ないですが、成虫が心臓内に溢れるほど寄生した場合、呼吸不全(息が苦しい)、心不全(胸やお腹に水が溜まる)および血色素尿(ワイン色の尿を出す)などの症状を呈します。これが、いわゆる後大静脈症候群(VCS)です。VCSになった場合は、致死的なことが多く、「成虫吊り出し術」といわれる緊急的な手術が必要となります。この手術は、極めてリスクの高い手術であり、例え成虫を完全に摘出したとしても既にダメージを受けた肺の血管を修復することは困難です。

 現在、月に1回服用することでほぼ100%、予防することが可能な経口薬がありますので、寄生してから治療するのではなく、何より予防が非常に重要です。予防薬の普及により以前より寄生動物数は減少したものの、未だフィラリアを寄生している動物が散在しており、それだけフィラリアに寄生した蚊も存在することが推測されます。

 当院では、蚊の発生期間を考慮し5月から12月までの計8回の投与を推奨しております。途中、飲み忘れなどにより投与が行われなかった場合、寄生することをあるので注意が必要です。尚、経口薬以外に背中に垂らすタイプの薬剤(毎月)もあります。また、薬剤を1回注射をすることで、1年間、予防が可能な薬剤もあります。フィラリア症は、犬以外に猫、フェレットなどにも寄生するため、これらの動物種においても予防をお薦めしております。

 当院で初めて、フィラリアの予防を開始される動物には、寄生の有無を判定するための血液検査を実施させて頂いております(生まれて間もない動物は除く)。