ペットの健康と病気

 ペットの健康のための飼い主様への注意事項やペットがかかる病気や治療についてなどのコラムです。適時に記事は追加しますのでお時間があればご参考にお読みください。

健康診断のおすすめ

 今週は、ようやく真冬らしい天候が続いております⛄。この季節は、狂犬病の予防接種や、フィラリア予防にはまだ早いので、健康に過ごしているワンちゃん、ネコちゃんは、病院に来る機会は少ないかもしれません。逆に言えば、健康診断の絶好のタイミングです🏥。

 健康診断で、どこまで検査を実施するかは、実はとても難しい問題です。ヒトの健診と同様に、検査はたくさん実施すれば、それだけお金もかかります。よく誤解されがちですが、血液検査で全ての病気が診断できるわけではありません。しかしながら、近年、獣医療において広く実施されている血液検査のシステムは、非常に多くの項目を網羅しているため、正しく解釈すれば、病気の診断もれが少なくなっているのも事実です。少なくとも、心臓と腎臓に重大な問題がないかチェックすることは非常に有益だと思われます。

 ワンちゃんの場合、聴診において一部の心疾患を除いて、比較的高頻度で異常を発見できる場合があるので、最低限の健診ということであれば、血液検査💉+尿検査をお勧め致します。

 ネコちゃんの場合、残念ながら聴診のみでは心疾患を疑うことができない場合も多いため、血液検査💉+X線検査(または心疾患マーカー)+尿検査をお勧め致します。

 尿検査は、ご自宅にて採尿できればそちらをご持参頂くことで、検査が可能です。採尿できない場合は、院内で実施可能です。また、心臓の検査が必要となった場合、循環器認定医が高性能の超音波診断装置を用いて検査をさせて頂きます。

 健診について不明な点があれば、お気軽にご相談下さい。

隠れ心筋症に要注意!

 久しぶりの投稿となってしまいました、、、。朝方、雪もちらつき、本格的な冬になってまいりました。

本日は、猫の心筋症についてお話ししたいと思います。心筋症は、いわば猫ちゃん独特の心臓の病気であり、簡単にいうと、心臓を構成している心筋が、正常よりも厚くなったり、逆に薄くなったりすることで、最終的に心臓が機能しなくなることでうっ血性心不全(胸、肺およびお腹に水がたまる状態)や、致死性の不整脈を呈し、動物を死に至らしめる病気です。

 2017年から当院にて心筋症と診断した猫ちゃんの統計をみてみると、若い個体では4カ月齢時で、この病気が発覚している場合もあります。また、雄猫の方が、雌猫より約1.6倍多くみられております。注意すべき点は、通常、避妊および去勢手術は生後6カ月以降で実施しますが、この時点で、何らかの心筋障害を有する猫が存在するという事実です。一方、不妊手術を実施する場合、全ての検査を実施すればそうした疾患を発掘できる可能性もありますが、現実的ではない面もあります。

 では、どうしたらよいかという問題ですが、まず一点目として、「不妊手術の麻酔で問題なかったから、うちの子は大丈夫。」という考え方を改めるべきです。なぜなら、よほど重篤な心疾患でもない限り、全身麻酔は健常な個体と同様に、いわば何事もなかったかのように終了することがほとんどだからです。

 二点目として、若い個体でも、年に1回程度の健康診断を推奨致します。これは、心疾患に限ったことではありませんが、これまで胸部X線検査を実施したことがない個体では、なおさら、若いうちに一度は撮影することをお勧め致します。胸部X線検査から、心疾患を強く疑えるケースもあり、心エコー図検査へ進むことができるからです。心エコー図検査へ進むことができれば、当院の超音波診断装置は、心臓専用機であるVivid S70(GE社製)を使用しているため、心拍数の速い猫においてもクリアな画像を描出でき、診断および治療へつながることが期待できます。ヒトの場合、病気や健康診断で病院を受診した場合、腹部エコー検査と心エコー図検査を同時に実施することは極めて稀です(診療科が異なるなどの理由により)。しかしながら、当院では、心疾患の見落としを防ぐため、超音波検査の際、腹部疾患でもなるべく心臓のスクリーニング検査を実施するようにしております。逆に、心疾患で受診された場合でも、腹部のスクリーニング検査を実施させて頂いております。検査時間も、機器の性能と診断技術の向上により、比較的短時間で実施することが可能となっております。

 心筋症によりうっ血性心不全を発症した場合、犬の粘液腫様変性性僧帽弁疾患による場合と比較し、圧倒的に予後が短いのが実情です。とにかく早期に心筋症を診断し、猫ちゃんのQOL向上に寄与することが重要と考えます。